B型肝炎
B型肝炎ウイルスキャリアの約10%が、B型慢性肝炎となり、肝硬変、そして肝がんへ
成人になってからB型肝炎ウイルスに感染しても(水平感染)、ほとんどの場合、ウイルスは体の外に排除されるため、感染が持続する(キャリア化する)ことは稀です。その一方で、母子感染によって乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、免疫系の働きが発達していないため、ウイルスを排除することができずに、約90%の方が無症状のままにB型肝炎ウイルスの感染が持続(キャリア化)し、B型肝炎ウイルスの「無症候性キャリア」となります。そして、B型肝炎ウイルスの「無症候性キャリア」となった子供が成長し、免疫系が発達すると、自身の免疫系がウイルスを排除しようとB型肝炎ウイルスに感染した肝臓を攻撃し始めます。その結果、肝臓が炎症を起こし、そのうちの10~15%の方が、炎症が慢性化するB型慢性肝炎になります。B型慢性肝炎になっても、症状はほとんどありませんが、治療をせず、そのままにしておくと、肝硬変へと進み、さらには、1年間にその中の1.2~8.1%の方が肝がんを発症します。
なお、B型慢性肝炎にならなかった85~90%の方は、B型肝炎ウイルスに感染した状態は続くものの、体内のウイルス量は少なくなり、肝臓の炎症は抑えられた状態になります。この方々は「非活動性キャリア」と呼ばれています[1]。非活動性キャリアでは、炎症は抑えられていますが、B型肝炎ウイルスは体内に住み着いており、気付かないうちに活動が活発になる可能性があるため、定期的に検査を受ける必要があります。
日本肝臓学会 編: 慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2016, 文光堂, 2016:p.11より改変
C型肝炎
肝がんの約65%は、C型肝炎ウイルス感染が原因
C型肝炎ウイルスに感染した方の約3割は、ウイルスが体外に排出され、治癒しますが、約7割の方はC型肝炎ウイルスに継続的に感染し、多くの場合、C型慢性肝炎になります。C型慢性肝炎はゆっくりと進行しますが、そのまま放置すると肝硬変に移行し、肝硬変になると1年間に約5~8%の方が肝がんを発症します[2]。そして、日本の肝がんの約65%は、C型肝炎ウイルスの感染が原因と言われています[3,4]。
https://www.jsh.or.jp/lib/files/citizens/booklet/understanding_liver_disease.pdf(2022年5月9日閲覧)