なるほど肝炎

用語集

ウイルスマーカー

血液中に出てくるウイルスの目印となる物質です。血液検査で、この目印があるかないか、またはどのくらいの量があるかを調べると、現在ウイルスに感染しているか、過去に感染したことがあるか、現在は治癒しているか、などがわかります。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、HCV-RNAが陽性なので、C型肝炎と診断されます。このまま放置しておくと肝硬変や肝がんになる可能性が高いので、ウイルスを排除する治療が必要です。

HCV抗体(えいち・しー・ぶい・こうたい)

からだに侵入してきたC型肝炎ウイルス(HCV)に対して、これを排除するために免疫応答によって作られた物質です。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、肝炎ウイルス検査で、HCV抗体というウイルスマーカーが陽性だったので、C型肝炎ウイルスに感染していると考えられます。さらに詳しい検査をしましょう。

肝炎ウイルス

人に感染すると、肝臓に侵入して炎症(肝炎)を起こすウイルスで、A型、B型、C型、D型、E型の5種類あります。

先生にこのように説明されることがあります。

肝炎には、肝炎ウイルスが原因の場合と、そうでない場合があります。まずは、あなたの肝炎の原因が肝炎ウイルスかどうかを調べてみましょう。

肝炎は、「脂肪肝」や、自己免疫性疾患、薬剤などが原因で起こることもあります。

肝機能検査

肝臓の働きを調べる血液検査です。肝臓の細胞が破壊されている度合いがわかるALTやAST、胆管系の障害がわかるγ- GTP、ビリルビンなどがあります。

先生にこのように説明されることがあります。

肝機能検査は正常ですが、C型肝炎ウイルスのウイルスマーカーが陽性なので、あなたはC型肝炎ウイルスの「キャリア」です。放っておくと慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進展していく可能性があるので、肝臓の状態やウイルスのタイプなど詳しい検査をして治療方針を考えましょう。

キャリア

ウイルスなどの病原体に感染した後、病気の症状は治まってもからだの中に病原体を持ち続けている状態(=持続感染)のこと。
C型肝炎ウイルス(HCV)のキャリアになる人は、感染した人の70~80%です。
B型肝炎ウイルス(HBV)のキャリアには、「無症候性キャリア」と「非活動性キャリア」があります。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、C型肝炎ウイルスのキャリアです。詳しい検査をして治療方針を検討しましょう。

急性肝炎

肝臓に急激な炎症が起こり、肝臓の働きが悪くなる病気です。発熱、食欲がない、だるいなどの症状がでることもありますが、症状がほとんどないこともあります。肝臓は、大きな臓器で少し傷ついても再生する力があるため、障害がおきても自覚症状として現れにくいため、“沈黙の臓器”と呼ばれています。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、症状と肝機能検査から急性肝炎と考えられます。詳しい検査をして原因を調べましょう。

C型肝炎ウイルス

C型肝炎の原因となるウイルスで、HCVともよばれます。肝炎ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型などがあり、このうちC型肝炎ウイルスは主に血液によって感染し、慢性肝炎、肝硬変、肝がんの大きな原因となります。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎とはC型肝炎ウイルスの感染により起こる肝臓の病気です。

あなたのC型慢性肝炎の治療に使うお薬は、C型肝炎ウイルスが肝臓の中で増える(“複製”といいます)時に必要な酵素の働きを妨げて、ウイルスの増加を防ぎます。

この薬がC型肝炎ウイルスに対して十分な効果を発揮するには、指示された期間、きちんと飲み続けることが大切です。

ジェノタイプ(ゲノタイプ)

ウイルスの遺伝子型のことです。
C型肝炎ウイルス(HCV)は、おもに1型〜7型の7つのジェノタイプに分けられ、さらにそれぞれいくつかのサブタイプがあります。
日本では、HCV感染者の約70%がジェノタイプ1型、ついでジェノタイプ2型で、3型〜7型はわずかです。
なお、最近、ジェノタイプ8型があることもわかってきました。

先生にこのように説明されることがあります。

ジェノタイプにより適した治療方法が変わってきますので、あなたに合った治療を考えましょう。

ジェノタイプの検査は保険がきかないので、通常は血液検査でセロタイプ(セログループともいいます)を調べます。セロタイプには1型と2型があり、セロタイプ1型が陽性ならジェノタイプ1型、セロタイプ2型が陽性ならジェノタイプ2型とみなします。ただ、この血液検査で陽性とならなかった場合は、ジェノタイプ3〜7型に相当するという意味ではないので注意が必要です。

ジェノタイプ1型(ゲノタイプ1型)

C型肝炎ウイルスの遺伝子型のひとつです。ジェノタイプ1型は、1a型と1b型という2つのタイプがあります。日本では、HCV感染者の約70%が1b型で、1a型はわずかです。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、ジェノタイプ1型です。初回治療としては、通常は飲み薬だけのインターフェロンフリー治療が第一選択とされていますが、ウイルス量が多い場合はインターフェロンを組み合わせることもあります。

ジェノタイプ2型(ゲノタイプ2型)

C型肝炎ウイルスの遺伝子型のひとつです。ジェノタイプ2型は、2a型と2b型という2つのタイプがあります。日本では、HCV感染者の約30%がジェノタイプ2型で、そのうち約2/3が2a型、約1/3が2b型です。

先生にこのように説明されることがあります。

あなたは、ジェノタイプ2型です。初回治療としては、通常は飲み薬だけのインターフェロンフリー治療が第一選択とされていますが、ウイルス量が多い場合は飲み薬にインターフェロンを組み合わせたり、ウイルス量が少ない場合はインターフェロンだけを用いることもあります。

ジェノタイプ3〜6型(ゲノタイプ3〜6型) 

C型肝炎ウイルスの遺伝子型のひとつです。日本では、ジェノタイプ3型〜6型のHCV感染者はごくわずかです。

先生にこのように説明されることがあります。

HCVのジェノタイプを調べたところ、あなたは日本人に多いとされているセロタイプ1型でも2型でもありませんでした。血液検査ではこれ以上わからないので、もっと詳しいジェノタイプ検査をしたいと思います。

あなたはジェノタイプ3型でした。ジェノタイプにより適した治療方法が変わってきますので、ジェノタイプ3型に合った治療を行います。

水平感染

母親から子へ感染する垂直感染(=母子感染)以外の、ヒトからヒトへの感染を水平感染といいます。病原体が含まれている血液や体液に触れることなどで感染します。

先生にこのように説明されることがあります。

肝炎ウイルスは、血液などを介した水平感染で周りのヒトにうつります。ご自分の血液などがついたものは他の人に触れないように注意してください。

潜伏期

潜伏期は、ウイルスなどの病原体に感染してから、病気の症状が現れるまでの期間です。
潜伏期には、自覚症状はほとんどありません。

先生にこのように説明されることがあります。

C型肝炎ウイルスの潜伏期は1~3ヵ月です。

慢性肝炎

6ヵ月以上肝臓の炎症が続いている状態です。原因の多くはB型またはC型肝炎ウイルスの持続感染です。慢性肝炎の状態が続くと、肝臓の「線維化」が進み、肝硬変になります。

先生にこのように説明されることがあります。

慢性肝炎をきちんと治療せずにそのまま放っておくと肝硬変になり、肝がんを発症することもあります。すぐに治療を始めましょう。

【参考資料】

  • 田中篤 編:ガイドライン準拠 C型肝炎治療 Q&A, 2016, 南山堂
  • 泉 並木 編:肝炎のすべてがわかる本 C型肝炎・B型肝炎・NASHの最新治療, 講談社, 2017
  • 日本肝臓学会 肝炎ガイドライン作成委員会 編:B型肝炎治療ガイドライン(第3.4版), 2021
  • 日本肝臓学会 肝炎ガイドライン作成委員会 編:C型肝炎治療ガイドライン(第8版), 2020